『カモのネギには毒がある』14巻89話に学ぶ「レントシーカー」の罠|管理栄養士が見抜く”権威”だけで売れる健康商品のカラクリ

「○○受賞」「専門家も推薦」——そんな肩書きを見て、思わず信頼してしまった経験はありませんか。

実はこうした”権威付け”の裏には、経済学でいう「レントシーカー」——価値を生み出す努力ではなく、既存の仕組みを利用して利益だけを引き出そうとする存在が潜んでいることがあります。

今回は、経済学漫画『カモのネギには毒がある』14巻89話が描く「レントシーカー」を入り口に、管理栄養士の視点から、健康・栄養業界における”権威”のカラクリを解き明かします。

この記事の要点(まとめ)

  • レントシーカーとは:新たな価値を生み出す生産的な活動ではなく、既存の仕組みや権威を利用して利益(レント)だけを得ようとする存在・行動のこと
  • 健康食品市場の罠:受賞歴・認証マーク・”専門家推奨”といった権威付けの中には、商品そのものの価値向上ではなく、消費者の安心感を”利用”するだけのものも存在する
  • 隠された都合の悪い真実:権威や肩書きは、本来その商品や情報が優れていることの”結果”であるはずが、しばしば”原因”であるかのように演出されてしまう
  • カモにならないための対策:肩書きや権威そのものではなく、その裏にある根拠(データ・エビデンス)を確認する視点を持つ

あらすじ:『カモのネギには毒がある』14巻89話のテーマ

日常に潜む経済の罠を痛快に暴く漫画『カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義』。その14巻89話では、レントシーカーという経済学の重要な概念が登場します。

レントシーキングとは、経済学者ゴードン・タロックらが提唱した概念で、新たな価値を生み出す生産的な活動(研究開発・品質改善など)に資源を投じるのではなく、既存の富の分配を自分に有利な形に変えるための非生産的な活動(規制の操作、独占的地位の確保、権威付けなど)に資源を投じる行動のことです。ここでいうレントとは、競争によらずに得られる超過的な利益を指します。

本来、企業や発信者が信頼を得るのは、優れた商品やサービスを提供した”結果”であるはずです。しかしレントシーキングでは、その順序が逆転し、“信頼されているように見せること”自体が目的化してしまいます。

豆知識:レントシーキングという概念は、1967年に経済学者ゴードン・タロックが発表した論文で提唱され、後にアン・クルーガーが1974年の論文でレントシーキングという用語を広めました。もともとは企業が政府の規制や関税を自社に有利になるよう働きかけるロビー活動を分析するために使われた概念ですが、現在ではブランドの権威付けや資格商法など、幅広い分野の”非生産的な利益追求”を説明する枠組みとして応用されています。

作中で加茂教授が鮮やかに解き明かしていくこの構造、実は私たちの身近にある「健康食品やサプリメントの業界」にもそっくりそのまま当てはまるのです。

管理栄養士視点で見る「レントシーカー」と健康・栄養業界のカラクリ

健康食品やサプリメントの売り場には、「〇〇賞受賞」「業界団体認定」「専門家も推奨」といった権威付けの言葉があふれています。しかし、管理栄養士の視点から見ると、その中には商品そのものの価値とは切り離された「レントシーキング」的な仕掛けが少なくありません。

1. 「権威の演出」だけで価格が上がる仕組み

売り手(メーカーや販売者)は、応募すれば一定の基準を満たすだけで得られる民間の賞やマーク、あるいは監修料を払って得た専門家の推薦コメントなどを、あたかも品質の証明であるかのように大きく打ち出します。

これらの権威付けの取得自体には相応のコストがかかりますが、そのコストは商品の栄養価や品質の向上には直接つながりません。むしろ、権威付けのコストがそのまま販売価格に上乗せされ、消費者が負担することになります。

2. 専門家が知っている「都合の悪い真実」

見落とされがちな事実。それは、権威付けの有無と商品の栄養学的な価値は、本来まったく別の軸だということです。

権威付けを得ること自体に労力とコストをかける発信者ほど、肝心の商品設計やエビデンスの検証に十分なリソースを割けていないケースも見受けられます。権威が本物の価値を”覆い隠す”逆転現象が起きているのです。

売り手は、権威付けによって得られる信頼感というメリットだけを消費者に見せ、それが実際の品質向上を意味するとは限らないというデメリットは語りません。これこそが、健康食品市場にはびこるレントシーキングの構造です。

3. 「権威」ではなく「根拠」を見るという発想へ

行動経済学の視点に立つと、有効な対策は権威や肩書きそのものを鵜呑みにすることでも、逆に全否定することでもなく、その権威の裏にどのような根拠があるのかを一段掘り下げて確認する姿勢です。

たとえば、その受賞や認証は何を基準に、誰が審査しているのか。専門家の推薦は、査読を経た研究データに基づくものか、それとも個人の感想に近いものか——。

権威という”看板”ではなく、その奥にある一次情報やデータにアクセスする習慣こそが、レントシーカーの罠から自分の食生活と財布を守る、もっとも現実的な対策なのです。

今日からできる!レントシーカーに搾取されないための3つのチェックリスト

ここまでの内容を、今日から実践できる3つの行動に落とし込みます。

  • 「〇〇賞受賞」「専門家推奨」を見たら、まず主催者・審査基準を確認する
    → 応募すれば取得できる任意の賞や、監修料が発生する推薦も少なくありません
  • 権威付けの言葉と、栄養成分表示・エビデンスを切り離して評価する
    → 権威は品質を保証するものではなく、あくまで参考情報の一つです
  • 「なぜ信頼できるのか」を一段掘り下げて考える習慣を持つ
    → 肩書きの”見た目”ではなく、その裏にある根拠に目を向ける

まとめ:レントシーカーの「カモ」にならないために

『カモのネギには毒がある』の加茂教授が言うように、権威や肩書きの仕組みを知らなければ、私たちは見た目の”信頼感”に流され続けてしまいます。

「〇〇賞受賞」「専門家も推奨」といった言葉を見かけたら、「この権威は、本当に商品の価値を裏付けているのだろうか?」と一呼吸置いて考える視点を持ってみてください。

健康食品やサプリメントの世界でレントシーカーに搾取されないための最大の武器は、権威の”見た目”ではなく、その根拠を確認する正しい栄養リテラシーです。肩書きに踊らされず、エビデンス(科学的根拠)に基づいた選択をしていきましょう!

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